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竹久夢二の小唄集『どんたく』(実業之日本社、大正2年11月5日発行)のカバー(当時は「包紙」と呼んだみたいです)に「この包紙の裏面を御一覧ありたし」という注意書きがあります。

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見てみると、カバーの裏側にハガキが印刷されています。
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要は、「本の中から一番好きな唄を選んでハガキに書いて送ってくれたら、その唄にふさわしい竹久夢二直筆の絵画をプレゼントしますよ」という企画なのです。募集要項を読むと20枚の絵画が用意されていたそうです。
大正2(1913)年11月の時点で竹久夢二がどれくらいの人気画家だったのかはよくわかりませんが、4年前に『夢二画集-春の巻』を出版してベストセラーになったようだし、そもそも人気があるからこそこんな小唄集まで出版できたのでしょうから、この企画も当時の夢二人気に乗っかったものなのでしょう。
でも、綺麗なカバーをハガキにしてしまうのも気が引けたでしょうから、きっと、読者は応募用と閲覧用との2冊を買ったと思われます。とすると、夢二も実業之日本社もがめついですね。

ところで、この本の冒頭に「TO」と印刷されています。ここに人の名前を書いて本を贈ったりしたんですね。
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で、気になったのは、どんな人が買ってどんな人に贈ったのか?ということ。
上記のプレゼント企画の結果は雑誌『日本少年』と『少女の友』(どちらも実業之日本社刊)で発表される旨の注意書きがありましたから、この『どんたく』の主な購入者は、これらの雑誌を読んでいた小中学生なのでしょう。
さらに、もっと引っかかったのは、この本の贈答が異性間のものなのか同性間のものなのか?ということ。
ここからはまったくの想像なのですが、男から男へ夢二本を渡すというのはさすがにないでしょう。異性間ならあり得るでしょうが、でもそんなおマセなことする小中学生ならもっと別の手を打つような気もします。なので、独断なのですが、これは主に女から女へ贈られたのではないかと。
ちなみに吉屋信子の少女小説『花物語』の連載開始が3年後の大正5(1916)年ですから、いわゆる「エス」の土壌が形づくられていた時代なのだろうとは思います。想像ですが。