2016年3月19日土曜日に世田谷文学館で行われた、クラフト・エヴィング商會(吉田篤弘・吉田浩美)による「金曜日の本」出版記念トークに行ってきました。
「金曜日の本」は、吉田篤弘さんによると「金曜日の夕方に、図書館で面白そうな本を借りて帰る道すがらのよろこびを大切にしたい」という思いからつくられた出版レーベルで、その第一弾として小説『おるもすと』と朗読レコード『天使も怪物も笑う夜』が作られました。(詳しくはこちらを

記念トークは、世田谷文学館学芸員のOさんがあらかじめ用意したいくつかの質問に吉田夫妻が答えるという形式で一時間半ほど行われました。それらの質問のなかに「世田谷区内のおすすめの場所は?」という質問があったのですが、篤弘さんが間髪入れずに「いまこの世田谷文学館の隣にある空き地です」と答えたのがとても印象的でした。おそらくは大型のマンションを建てるためだろう、整地された広い空き地がいま文学館の南隣にあるのですが、篤弘さんによると自分が子供の頃の世田谷にはこんな空き地が多くあったのだそうです。

篤弘さんの小説には世田谷区内をモデルとしたような街が出てきますが、これは現在のように住宅が密集した街ではなくて、空き地がまだまだ残っているすこし昔の街をイメージするのがいいのでしょうね。

新著『おるもすと』のために活版印刷屋さんに相談に行った話も興味深く聴きました。中でも、日本で書籍の活版印刷ができるのは、東京と京都に1社ずつあるのみという話に驚きました。ちなみに今回は東京雑司ヶ谷にある印刷所でドイツ・ハイデルベルグ社製の機械で印刷したそうです。夫妻はこの名機で印刷するのが長年の希望だったんですって。

印刷だけでなく、用紙も普段では使えないような高級な紙を使っているとのことで、商會のおふたりがいつもダメ元で出版社に申請しては却下されている、これまたドイツのグムンド社の紙を表紙に使うことができたと、嬉しそうに話していました。

「金曜日の本」たちはたしかに採算度外視した作りになっていて、『おるもすと』なんて本文67頁の薄い本なのに定価1600円ですもんね。でも世田谷文学館ではそんな本が飛ぶように売れていました。いまのところ世田谷文学館でしか買えないという事情も多少は影響しているのでしょうが、大勢の人が同じ本を求めて長蛇の列を作っているという光景は壮観でした。

小説『おるもすと』の感想などは別の機会に書くつもりです。